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山梨県笛吹市 久津間紀道さん
桃の達人・久津間紀道さん。桃の精と言われた範彦さん亡き後その食味を落とすことなく、非常においしい桃を栽培し続けています。
大地を守る会の産地担当の間で「桃の精」とあだ名された人がいました。
笛吹市の桃農家・久津間範彦さんは、桃が大好きで、
通常は桃とぶどう、すももなどを組み合わせて
複合的に経営する人が多い山梨県の果樹農家のなかにあって、
ほとんど桃しか作っていない珍しい人でした。
範彦さんは2009年、桃の花が満開の4月にお亡くなりになりました。
桃の精だから桃の花の季節に逝っちゃったと思ったものです。
木と木の間が広く風が通り抜ける久津間さんの桃畑。風通しが良いことで病気のリスクが減り、おひさまがじゅぶんに当たることで桃の糖度が高くなります。
さて、その範彦さんには後継者がいました。
息子の紀道さんは、1997年に桃の栽培の手伝いを始め、
現在では範彦さんに負けないおいしい桃を作っています。
桃の精の後継者は桃の達人でした。
実はこの桃の達人の血筋は、三代にわたります。
現在、桃の一大産地である山梨県の一宮近辺ですが、
昭和20年代まではまだ、米麦養蚕を営んでいる農家がほとんどでした、
その米麦養蚕主体の経営をあっさりやめ、桃栽培に切り替えたのが、
範彦さんのお父さん、つまり紀道さんのお祖父さんでした。
当時桃を栽培している人はほとんどいなかったため、かなり儲かったらしいです。
「父には先見の明があったってことだね」と感心していた故・範彦さんでしたが、
範彦さん自身、近隣の農家が農薬をバンバンまいて桃を作るなか、
いち早く減農薬栽培を取り入れた人でもありました。
農薬をそんなにまかなくても、桃は作れる。
虫が出る時期をちゃんと見ていれば、農薬は減らせる。
範彦さんはいつもそんなふうに言っていました。
百以上の鼻の中から果実になるのはたったひとつです。きれいに色づき出荷されるまで、大切に大切に育てられています。
山梨県の桃の農薬数は「特別栽培農産物基準の慣行基準」によると20成分。
この数は農薬の散布回数ではなく成分数ですが、わかりやすく言うと、
だいたい花が咲いてから収穫まで、1週間に一度農薬をまいていると
言っても良いでしょう。
久津間家の桃の農薬散布回数はこの約1/4。
なぜこのように少ない農薬散布回数で桃ができるのでしょう?
これは、木の間を広く取って風通しを良くし、枝を適度に切って
病気の蔓延を防ぐこと、日々の観察によって害虫の発生時期を見極め、
バチッと一度で効かせること等々、日々の作業の積み重ね、
桃畑にひんぱんに通うことで可能になります。
「おいしい作物を作りたいなら、その作物にあなたの足音を聞かせなさい」と
よく言われます。畑に通い、作物の状態をよく見て、
一番いいタイミングでやらなければならないことをする、
これは桃が大好きな桃の精だからできたのかもしれません。
さて、紀道さんが桃の管理を一人で初めてすでに5年。
桃の味は落ちるどころかますます輝きを増しています。
人の畑よりも2~3日早く花が咲く久津間さんの桃、
これは長年入れ続けたボカシ肥のおかげだと紀道さんは言います。
まだ春先の寒い頃から、ボカシ肥が育てた微生物が活動し、
地温を上げることで、桃の成育が早まるのです。
手で触ったところから傷み始めると言われるほどデリケートな桃。できるだけ木に置いた状態で収穫し糖度の高いおいしいものをお届けしています。
化学肥料を使っている畑ではこうはいきません。
化学肥料は大きな果実をたくさんならせますが味の薄い桃になります。
農薬と化学肥料はみためのきれいな大きな桃をつくりますが、
その味はいまひとつ。やはり有機質肥料にかなうものはありません。
さて、桃農家は5月に入ると桃シーズンに突入します。
着果した桃の実が少しずつ大きくなると、桃の実の調整「摘果」の開始です。
放っておくと小さな実が大量に出来てしまう果樹類は、
おいしい果実をならせるための適正な着果数が決まっています。
基本はひとつの枝に一個。花が100個咲いたとしたら残るのはたったひとつ。
その枝についている葉が光合成をしてつくりだした糖分は、
全て桃の果実に移動しますから、味の濃い、おいしい桃になります。
たくさんならせればもちろん儲かります。でも味はどうでしょう。
木にどれぐらいつけるかは、どれぐらいおいしいものを作りたいか
その農家がどう考えているかによります。つまり農家の欲によるということです。
久津間家では最後の最後まで摘果に余年がありません。
よりよいもの、おいしいものを食べてもらいたいという思いが
最後に残るたったひとつの桃につまっています。
さて、実は一般的な桃は、輸送やその後の作業に耐えられるよう、
熟す少し前に収穫されています。桃は熟度が上がって柔らかくなると、
桃が傷んで商品にならなくなるデリケートな作物だからです。
熟す前に収穫した桃は糖度もあがっておらず、そんなにおいしいものではありません。
市販の桃に当たり外れがあるのは、この収穫時期が問題とも言えます。
大地を守る会では、久津間さんの桃を一番いい状態でお届けできるよう、
できるだけ樹において熟度が上がったものを収穫していただいています。
桃のシーズンには毎日山梨県へトラックが走りデリケートな桃を大切に運びます。
これは収穫の翌々日に、大切に箱詰めしたものを皆さんのところに届ける、
「宅配」という大地を守る会のシステムのメリットでもあります。
久津間さんが大切に育てたたくさんの花の中から選抜された
たったひとつの桃の果実が、みなさんのもとへ届きます。
きっとしあわせな気持ちになると思います。
桃の精の後継者、達人の桃をぜひ食べてみてください。
文・写真/手島奈緖(てしまなお)
食料ジャーナリスト。2010年「ほんものの食べものくらぶ」を設立、食べる人と作る人をつなぐ活動に取り組んでいる。